2. 「ムダに時を使うなと、時計怒らん」

このセリフはシェイクスピアが書いた喜劇の中でも傑作と名高い『十二夜』からの引用である。『ハムレット』や『ロミオとジュリエット』等、悲劇の印象が強く難しいと思われがちなシェイクスピアだが、実はコメディに分類される作品が13作品もある。現在のコントのような軽快でバカバカしい内容の物もあり、肩肘はらずに笑える作品が今も残っている。
 上のセリフはオリヴィアという令嬢が、男装している少女ヴァイオラに惚れ込んでしまい躍起になって口説いている時のセリフだ。時計が鳴った音を聞き、「もう行かなければ」とヴァイオラを焦らそうとするのだが、当のヴァイオラはどこ吹く風。ヴァイオラになんとか振り向いてほしいオリヴィアは、帰ろうとするヴァイオラをまた引き止め「私のことをどうお思い?」と聞きだそうとする。積極的なオリヴィアの姿勢が可愛くもあり、ちょっと怖くもある場面である。
 『十二夜』という戯曲のストーリーを説明するのは難しい。ヴァイオラは船で難破して双子の兄と離れ離れになり、男の子に変装して公爵オーシーノーに仕えることにする。そこでオーシーノーに密かな恋心を抱くのだが、彼はオリヴィアに夢中、そしてオリヴィアはオーシーノーからの使いで来たヴァイオラに一目惚れしてしまう。単なる三角関係といえばそうなのだが、シェイクスピア独特のセリフ回しや魅力的な脇役たち、全体に流れるどこかメランコリックなトーンが人気でシェイクスピア喜劇の中でも上演の機会は多い。
 特に見ものなのは、オリヴィアに仕える執事、マルヴォーリオを罠に嵌める「マルヴォーリオいじめ」と言われる脇筋。頑固で居丈高な物言いをするマルヴォーリオに反感を抱いた3人組が彼を騙して奇妙な行動を取らせ笑いものにするというストーリーだ。

大学生は図書館から借りたりして見てほしいし、これはこれで面白いものがあるものだ。