日本に適したオオムギができるか?岡山大学資源植物科学研究所の佐藤和広教授、農研機構の研究成果

岡山大学資源植物科学研究所の佐藤和広教授、農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)の小松田隆夫主席研究員らの国際共同研究グループは、オオムギの発芽を一定期間休止させる主要な種子休眠性遺伝子「Qsd1(キューエスディーワン)」の配列を特定。

Qsd1が種子の胚の中で特異的に作用し、植物種子の休眠性では報告のないアラニンアミノ酸転移酵素を制御することで、休眠をコントロールする仕組みを世界で初めて突き止めました。また、300品種余りの遺伝子配列の比較解析によって、イスラエル付近(南レバント)の野生オオムギから醸造用のオオムギ(休眠の短い品種)の祖先が起源し、その後その中から、ビールなどの麦芽製造の際に休眠の短い突然変異品種が選抜され、世界各地に伝わった歴史も判明しました。本研究成果は5月18日(英国時間午前10時)、「Nature Communications」電子版に公開されました。

 現在、世界で栽培されているオオムギは、地域やその用途によって種子休眠の長短に大きな差があります。ビールやウイスキー用のオオムギは、醸造を効率的に行うため、休眠が短く、一斉に発芽するものが適しています。一方、日本や北欧など収穫期に雨の多い地域では、休眠が短い品種などで、穂についたまま芽の出る穂発芽(ほはつが)が発生。農業生産に大きな損害が出ています。

 オオムギの休眠性を制御することは、オオムギの生産や醸造業にとって極めて重要な課題です。本研究成果によって、オオムギ品種の遺伝子配列の差を利用した種子休眠の調節が可能になり、穂発芽の防止や麦芽醸造に適したオオムギの品種開発が進むと大いに期待されます。

<本研究のポイント>
①オオムギの発芽を一定期間休止させる主要な種子休眠性遺伝子「Qsd1」の配列を特定した。本遺伝子は、これまで植物種子の休眠性では報告のないアラニンアミノ酸転移を制御し、種子の胚のみで特異的に作用することで休眠をコントロールしていた。

醸造用のオオムギは、ビールやウイスキー用の麦芽醸造の際に休眠性の短い突然変異品種が選抜され、世界各地に伝わった歴史を持つことが判明した。

③穂発芽(ほはつが)の防止や、麦芽製造に適したオオムギの開発が可能となる。

http://www.nature.com/ncomms/2016/160518/ncomms11625/full/ncomms11625.html

要は、日本に適した大麦に品種改良に期待できるらしい。